飲酒運転(いんしゅうんてん、英drink-driving、米drinking and driving)とは、飲酒後にそのアルコールの影響がある状態で車両等を運転する行為をいう。同様な状況で鉄道車両・航空機・船舶等を操縦する場合には、飲酒操縦(いんしゅそうじゅう)という。
一般に、交通法規などとの関係により及ぶ規制との対応により、飲酒等により血中または呼気中のアルコール濃度が一定数値以上の状態で運転または操縦することをして特に飲酒運転という(狭義の飲酒運転)。
酒に含まれるアルコール(エタノール)は、中枢神経系に作用し脳の神経活動を抑制(麻酔作用)する物質である。飲酒は、運動機能の低下、理性・自制心の低下、動態視力・集中力・認知能力・状況判断力の低下等を生じさせる。
このため、多くの国においてアルコールの影響下にある状態での運転を禁止している。日本においては、道路交通車両等の場合は道路交通法第65条第1項で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定されており、違反は取締りの対象となる。同法上の「車両等」には自動車やオートバイ(原付含む)だけでなく自転車等の軽車両、さらにトロリーバス、路面電車も含まれる。鉄道車両の場合には、鉄道に関する技術上の基準を定める省令第11条第3項、軌道運転規則第6条の2第2項、無軌条電車運転規則第2条の2第2項により、飲酒操縦[7]が禁止されている。航空機については航空法第70条に、船舶等については船舶職員及び小型船舶操縦者法第23条の36第1項にそれぞれ規定があり、飲酒操縦としてそれぞれ禁止されている。
☆日本においては、交通飲酒検問等により飲酒運転として検挙された場合、次の条件を全て満たす限りにおいて、必ずしも現行犯逮捕されない。
●呼気中のアルコール濃度が軽度(0.25mg未満)であること
●飲酒運転時の外形、また本人の挙動において危険性、不安定性が見られないこと
●飲酒運転等の再犯歴がないこと(常習でないこと)
●呼気中のアルコール濃度を計測した証拠を提示され、現行犯逮捕もありうる状況にもかかわらず、犯行を認めない、抵抗するなどの、悪質行為をしないこと
●併合する交通事故、あるいは信号無視や一時停止無視、速度違反など危険な交通違反の発生等がないこと
※ただし、アメリカ合衆国を初めてとして、各国においては、身体能力に影響する物質として、酒類も覚醒剤等の向精神薬と同じ定義とし、「Driving under the influence(薬物等の影響下での運転)」(DUI)として基準を設け、当該DUIの基準を超えた場合は刑事事件として、飲酒運転に関する嫌疑のみにより逮捕・勾留などの身体拘束がなされる例が見られる。
飲酒事故に対する罰則の強化は、その処分に対する恐怖・プレッシャー等から、ひき逃げの増加を生み出す要因となった。その場から一旦逃げ去ることで、ひき逃げの罰則を受けたとしても危険運転致死傷罪よりは軽かったためである。これを防止するため、ひき逃げに対する罰則が強化された(2007年施行)。また、「ウィドマーク法」により、飲酒時点の時間および飲酒量と、出頭時間から、運転時の血中アルコール濃度を計算により推定することで、酒気が抜けた後の出頭等においても、飲酒運転(危険運転致死傷罪の構成要件の一)としての検挙が行われている。
漫画「カバチタレ!」に、警察官の前で飲酒をすることで、飲酒検問による検挙を逃れるという話が掲載されている(第1巻その六「酔ってもただでは起きぬ人々」)。しかし、当該飲酒行為そのものが、検知拒否にあたると考えられ検挙される可能性が高い。
飲酒運転は過失事犯ではなく故意の犯罪事犯類型して認識されており、一般の刑法犯と同様、徒に刑事罰や行政処分等を強化するだけでは飲酒運転事犯を含め、犯罪の減少にはなかなか繋がりにくい現実もある。また、規範意識の欠如の一因としてアルコール依存症が指摘されている。アルコール依存症は自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神疾患である。精神疾患として酩酊し、酩酊した結果、自己抑制を失い、その状態で自動車等を運転するというのは著しく重大な結果を招く。その他、公共交通機関の不十分な地方のほうが都市部と比して飲酒運転の発生頻度が高いという傾向が見られる。エンジンをかける前に呼気検査をクリアしないと、エンジンがかからないという装置があり、スウェーデンなどではそういった装置の使用義務化が推進されている。日本においてもこういったハード面からの対策が必要であろう。
夜更けに飲酒し、翌朝早くの出勤などで運転するような場合、酒気帯び運転の恐れがある。具体的な時間は、飲酒量や体質によるので一概に言えないが、例えば、航空機の操縦では、運転前8時間は飲酒をしないよう通達で求めており参考となるであろう。
アルコール飲料以外にも、酒類を用いた洋菓子や奈良漬の他、ノンアルコールビールなどを食べたり飲んだりした場合、体質や摂取量によっては飲酒運転になる可能性がある(ノンアルコールビールとよばれているものでも、一般に0.1〜0.9%程度のアルコールが含まれている[14]ため、基準に該当する可能性がある)。また、栄養ドリンクにも微量だがアルコールが含まれているものがある(高いものでは3%程度のものも)。
交通事故により病院に搬送された場合、採血試料がエタノール検査に供されることがある。日本の医療機関では皮膚消毒にエタノールを含む消毒薬を用いることが多く、採血部位の皮膚消毒に用いたエタノールが採血試料に混入し、誤って飲酒運転と判定される可能性が指摘されている。
彦根市の例では飲酒運転が発覚した場合には停職・免職など厳格に処分するとしながらも、公務外(勤務時間外)の違反や事故の報告は義務付けないとした。これを不祥事の隠蔽体質として批判する向きがある一方、『何人も、自己に不利益な供述を強要されない』と定めた憲法第38条の趣旨から、強制する事は違憲であり、市への報告は職員自らが道義的に判断すべきとの意見がある。(もっとも、憲法38条はいわゆる黙秘権(司法機関から被疑者・被告人への自己に不利益な供述強要の禁止)を定めるものと一般に解されているため、職位上の不利益処分を免れることまでをも保護の対象とするものでないとする声もある。)
2007年5月、山形県議会議員が飲酒運転で摘発された。その後、県議会が全会一致で可決した辞職勧告決議に従わないため、県議会は、政治倫理審査会が勧告の受け入れと辞職まで本会議や委員会への出席を自粛するよう求める審査結果を出した。2007年2月愛知県岡崎市議会議員も飲酒運転で摘発された。その後、議員辞職届けを提出し受理された。
2003年11月に飲酒運転で懲戒免職処分となった熊本県の教師は処分撤回を求めた結果、勤務評定が良いなどの理由で処分は不当だという判決が最高裁で出た(2007年7月12日 朝日新聞)。
福岡飲酒運転事故、東名高速飲酒運転事故も参照のこと
【ウィキぺディアから参照しています】